玩具の大手、バンダイは同社が発売したパソコン「RX78ガンダム」を今後三年間、モデルチェンジしないことを決めた。今後のソフト開発や販売努力を一機種に集中して統一規格パソコン「MSX」に対抗していくのがねらい。一年もたてば旧式化してしまうといわれるパソコン市場でこの種のモデルチェンジ凍結は極めて異例のケースだ。
「RX78ガンダム」は同社がシャープと共同開発、八月に発売した記憶容量八ビットクラスのパソコン。ソフトウエアカートリッジを二本同時に装着できるスロットを持ち、簡単な操作でゲームやホビーに使えるのが特徴で、価格は五万九千八百円。
発売後、同一価格帯で大手家電メーカーが相次ぎ「MSX」パソコンを発表したが、同社では「演算速度、図形処理能力などのケタが違い、今後とも今の当社製で十分対抗できることがわかった」(山科社長)ため“モデルチェンジ凍結”を決めた。
バンダイがモデルチェンジ凍結という、パソコン業界の常識からすれば「無謀」とも思える商品戦略をとるのはハードに対する絶対的な自信と、今後はソフトの蓄積が勝負になる、との判断からとみられる。「RX78」は同社が玩具、ゲームメーカーとして総力を挙げてシャープと共同開発した自信作だ。カスタムICをふんだんに使い、高速三次元処理など高度なグラフィック機能が売りもので、価格も「利益はソフトで」とかなり低い線に抑えている。
つまり同社は「価格、性能で最低三年はMSXに対抗できる」と読んでいるのである。
【出典】日経産業新聞 1983/10/18付
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