「そのノブは心の扉」(連載第245回)
小学生の頃、MSXという今思えば玩具のようなパソコンではあったが、いつもそれで遊んでいた。当時、「MSX・FAN」という雑誌があって、そこにBASICというプログラムが載っており、それを見ながら不器用な手つきでキーを一文字ずつ押していくのだ。ゲームのプログラムなどもあるのだが、それらは子供の僕には難し過ぎるので、中でも簡単そうなものを選んで打ち込んでいく。簡単といえども数時間はかかる。そして、ついに完成した『天ぷらを揚げる音』という実にシュールなプログラムが奏でる音に目を閉じて耳を傾ける。一体、何が楽しかったのか。いや、しかし何よりも辛かったのは、次の日に家に呼ばれてそれを聞かされていた友人達だろう。ラジコンやらファミコンで遊びたい放課後の時間を割いて、天ぷらを揚げる音を聞かされるのだ。ジャイアンのリサイタル並みに酷い、いわばサイバージャイアンである。
(以下略)
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